ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

『ハルとカナ』

久しぶりに日本語の作品を読みました。

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『ハルとカナ』(2016 講談社)

ひこ・田中作、ヨシタケシンスケ

 

児童文学風で大人向けで、最初の方からドキッとするような作品です。絵もとっても良かったです。

私はイディッシュ語の作品を読むのですが、状況が分からなくて困ることがよくあります。日本の家庭や学校について、もし上手に翻訳しても、外国の人には分からないことは多いと思います。例えば「ランドセル」が子どもやその親族にとってどんな意味を持つのか、どのくらいの大きさでどのくらいの重さなのかなど。知らない世界のことを読むときには、こうやって絵があると助かるなあと思いました。

この本の文字や行の間隔や装丁も、よくある児童文学に似ています。そういう本を手に持って物語の世界に入り込むと自分で本を読む子どもたちの気持ちもわかるような気がしました。

小学校低学年のお子さんをおもちの方にはぜひ読んでいただきたいです。恋をしている人にも良いかもしれません。

Article "A Yiddish retreat in Israel – through Japanese eyes"

ニューヨークのイディッシュ語新聞Forvertsに寄稿しました。
My new article on the first Yiddish weekend in Israel
in the Yiddish Newspaper Forward.

"אַ ייִדיש־סוף־װאָך אין ישׂראל — דורך יאַפּאַנישע אױגן"
(A Yiddish retreat in Israel – through Japanese eyes)
January 6, 2020
Satoko Kamoshida

forward.com

『ビロビジャンの星』に寄稿しました

『ビロビジャンの星』(2019年12月25日)

「世界中からハヌカのメッセージ」企画に寄稿しました(7ページ目)。

I sent a message to Birobidzhaner Shtern(Dec. 25 2019, p. 7): "Khaneke Bagrisungen fun iber der Velt."

You can read Birobidzhaner Shtern online.『ビロビジャンの星』のサイト:

Биробиджанер штерн — Издательский дом "Биробиджан"

PDFで読めます。

他にアメリカ、フランス、アルゼンチン、ブラジルのイディッシュ語講師がメッセージを寄せており、じわじわと盛り上がってきています。

イディッシュ語のような少数言語の出版活動は、中心的にかかわる個人の情熱で、かなり活発になるんだなと感じます。私も記事を書いて出版人とやりとりしているとき、すごい情熱を感じます。イディッシュ語出版活動や出版人については、『現代イスラエルにおけるイディッシュ語個人出版と言語学習活動』出版活動の章を参照。

 

ハヌカとクリスマスのお話

I talked about Chanukah and Christmas at a nursery school in Tokyo.

都内にあるキリスト教系の保育園で、園児たちによるキリスト聖誕劇の本番数日前に、クリスマスのことやユダヤ人の光のお祭り「ハヌカ」(西暦では毎年違う期間にお祝いしますが、今年はクリスマスとかぶっています)のことを話しました。

ハヌカといえば、油!

ドーナツ「スフガニヤ」!手前のが定番です。

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ハヌカの前のエルサレムで撮影

Children were so pure and curious and I was very happy.

子どもたちが、動画やGoogle mapで見せる世界地図に年々慣れていくのに驚きます。年長さん向けのレクチャーを準備しているときは、まだ世界地理は難しいかなと思うのですが、地理に超詳しい子がいて驚きます。

エルサレムの今の写真や動画を見せたら、とくに路面電車の動画は人気でした。

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↑人と路面電車の距離にご注目ください

聖誕劇に出てくる地域の現在の様子を、自分たちが住んでいる世界と比べてみんなで楽しめます。

得意分野を発揮する子がいると、クラスが盛り上がって嬉しいです。子どもたちが素直で輝いていると感動します。

今年はクリスマスに並んで「ハヌカ」のお話もしました。意外にもそれが人気で、子どもたちからの質問も多かったです。ハヌカのビデオや歌、こまも気に入ってもらえて嬉しかってです。

ベツレヘムのクリスマスの話もしました。YouTubeでもクリスマスのベツレヘムの様子が動画で公開されていますので、検索してみてはいかがでしょうか。

ホワイトハウスでもイベントが開かれるハヌカ

Presidential Message on Hanukkah 2019 | The White House

北米の都市にあるデパートの窓にはハヌカ柄の商品券(カード)の宣伝もあります。それほど浸透しているハヌカ。お子さん、お孫さんにハヌカのコインチョコをおねだりされる日も近いかもしれません。

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a goyshe velt.

Chanukah, Oy Chanukah! in Japanese

Here is a Japanese translation of the "Chanukah, Oy Chanukah!".

 

ハヌカ オイ ハヌカ ver 2019

(訳:鴨志田聡子)

楽しい、嬉しい、ハヌカハヌカ
光のお祭り、ハヌカハヌカ


みんなで楽しく、こままわし、
あつあつラトケス、おいしいな


さてさて、ともそう
ハヌカのろうそくを


歌おう、ハヌカ
踊ろう、ハヌカ
奇跡の灯火

 

Chanukah song in Japanese:

Chanukah, Oy Chanukah ver 2019

(translated by Satoko Kamoshida)

Tanoshi, ureshi, chanukah chanukah

Hikarino omatsuri, chanukah chanukah

 

Minnade tanoshiku koma mawashi

Atsuatsu latkes oishiina

 

Satesate tomoso

Chanukah no rosokuwo

 

ラトケス作りました。スライサーで指を切らないように気をつけてください。

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こま。ドレイデルと呼びます。

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 Utao Chanukah

 Odoro Chanukah

 Kiseki no tomoahibi   *2

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The 1st Yiddish Weekend 2019

Dear Yiddish lovers all over the world,

Here are the photos of the 1st Yiddish weekend 2019 (ייִדיש סוף־װאָךYidish sof-vokh) by Dr. Mirim Trinh, Eliezer Noborski and their children (ikh hob zey zeyer lib).

זה משהו כדאי.

We spent onw weekends together talking in Yiddish in Nes Amim (Nortth of Israel, near from Hifa). I found there people in different backgrounds. Mostly we talked in Yiddish. It was well organized. I saw the most (probably all) of the participants were satisfied there. The participants were also very nice.

I've heard they (the organizer Miriam and Eliezer are planing for the next Yiddish weekend. During the meeting, you can use Hebrew, English and maybe other languages :). No worries.

イディッシュ語の週末というイベント。イディッシュ語だけで週末を過ごそうという、お手軽で画期的なイベントです。場所はネス・アミームというイスラエルの北部のキブツのホテルでした。楽しい仲間に会えました。イディッシュ語イスラエルの何気に盛り上がっているんじゃないかという感触。日本のイディッシュ語学習活動についても発表しました。

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ケレットのピッツェリア・カミカゼ

エトガル・ケレット&アサフ・ハヌカによる自殺者の死後の世界がテーマの作品『ピッツェリア・カミカゼ』(河出書房新社 2019)。『アンチ』(岩波書店 2019)を訳した時に、ユダヤ教イスラエル社会における自殺が日本のそれとかなり違うことを知りました。自殺のこととか、どんな死に方をしたかを死んだ後も引きずることとか、死後の男女の関係とか、自殺者のさらなる死とか、天使とか、いろいろ興味深かったです。

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「渋谷のほんだな」に出ました

Talked about the Hebrew literature I translated Anti (Iwanami 2019, by J. Yavin) on Shibuya no Radio (Nov 26).
11月26日(火)13時より放送の渋谷のラジオの「渋谷のほんだな」という番組に出ました。
録音を聴くことができます。
渋谷のほんだな|「渋谷のラジオ」|note

渋谷のラジオのサイトです。
渋谷のラジオ 87.6MHz

「渋谷のほんだな」のテーマは本です。
渋谷のほんだな 火曜日13:00-14:00|「渋谷のラジオ」|note

下北沢の本屋B&Bの原カントくんさんと、すごいエリザベスさんの番組です。
B&Bについてはこちら:
本屋 B&B

サメフ・ゾアビ監督(映画『テルアビブ・オン・ファイア』ほか)に会いました

現在、渋谷や新宿の映画館で公開中の、コメディ映画『テルアビブ・オン・ファイア』のサメフ・ゾアビ監督とお話しました。

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来日中のサメフ・ゾアビ監督(右)(2019年9月20日渋谷)

私はゾアビ監督のクリエイターとしての側面に共感しました。
イスラエルパレスチナの文化人のインタビューでは、中東情勢への見解や態度の表明がもとめられがちですが、彼も例外ではないようです。
また作品の企画や資金集めにおいても、避けられない話なようです。あくまでやりたいのは映画作りな彼にとって、映画のテーマが限定されることには、かなり葛藤があるんじゃないかなと思いました。作品そのものを見て、笑ってもらいたいようでした。パレスチナ人は笑うのが大好きとのこと。そういえば私が留学中に出会った人たちはかなり明るかったです。

コメディが大好きなゾアビ監督、もし大成功したらどんな映画を作りたいかと聞いたら、Romaと即答でした。
en.wikipedia.org

ゾアビ監督は、一日にいくつもの取材を受け、だいぶおつかれのご様子でしたが、いろいろと親切丁寧に答えてくださいました。

ラディノ語(ユダヤ・スペイン語、ジュデズモ)がきけるサイト

下に日本語が続きます。

The project by Ioana (Ms. Ioana Aminian Jazi, MA, University of Vienna). Please check the following links.
Judeo-Spanish in Istanbul
Language Shift among Sephardim and Kalmyk

ウィーン大学の新進気鋭の若手研究者ヨアンナさんは、イスタンブルでたくさんのラディノ語話者やその子孫にインタビューしました。イスタンブルに行ったとき、彼女のインタビューがとってもすごかったことを色んな人が語ってくれました。

"Interview moments", Burgaz, Turkey

字幕付きの映像は、とても理解しやすいです。そしてお話の内容はとても興味深いです。今後も増えていくとのこと。
ということで、
動画はこちらのリンクからどうぞ:
Judeo-Spanish in Istanbul

ヨアンナさんの研究についてはこちらのリンクからどうぞ:
Language Shift among Sephardim and Kalmyk

BETWEEN LANGUAGE SHIFT AND REVITALIZATION
THE DYNAMICS OF LANGUAGE SHIFT, LANGUAGE ATTITUDES AND IDENTITY IN SEPHARDIM AND KALMYK COMMUNITIES
Candidate: Ioana Aminian, MA

イディッシュ語辞書無料PDF

ケンタッキー大学のフィンケル教授(Prof. Raphael Finkel)のサイト。
https://www.cs.uky.edu/~raphael/yiddish.html
フィンケル先生のご専門は情報工学ですが、イディッシュ活動も熱心にやってらっしゃいます。とっても素敵なイディッシュ語話者です。
フィンケル教授のサイトにイディッシュ語辞書の無料PDF、オンライン辞書、スペルチェッカー、文学テキストのデータのリンクがあり、大変充実しています。

コマエFM出演のお知らせ

11月11日にコマエFMというラジオ局が番組放送をはじめました。

東京都狛江市内向けの放送ですが、ネットでも聴けるようです。
https://www.komae.fm/

防災用ラジオとしてはじまったようですが、普段からライブでいろんな番組が聴けます。

私もたまに出演します。いろいろな本を紹介しようと思っています。
月に2回くらい、月曜日の9時すぎから30分間の出演です。

今のところの出演予定:
11月25日
12月2日、16日
1月20日、27日

『テルアビブ・オン・ファイア』

11月22日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開のパレスチナ人監督によるコメディ映画『テルアビブ ・オン・ファイア』をみました。ズバリ、とっても面白いので超オススメです。

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© Samsa Film - TS Productions - Lama Films - Films From There - Artémis Productions C623

 ピタピタの青シャツ姿が素敵な主人公サラム(↑)は、パレスチナ人です。彼はわけあって、パレスチナ人もイスラエル人(ユダヤ人)もみている超人気のメロドラマの脚本家に抜擢されます。視聴者の多数派が女性です。とりあえず、日韓関係が微妙な時も韓流ドラマは人気な状況と似ているとイメージしてください 。

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© Samsa Film - TS Productions - Lama Films - Films From There - Artémis Productions C623

社会的に成功したい!理想の社会にしたい!でも、大切な女性にも振り向いてほしい!マッチョなオレを見てくれ!男性たちはその気持ちをメロドラマで形にしていきます(すごく素敵です)。

女性たちの動向を気にする男性たち。一方女性たちは、そんなことはおかまいなし。感情を爆発させて男性たちに圧力をかけます。社会もドラマのシナリオも、枠組みを決めてきたのは男性たち。でも男性たちは、いつも女性のことを気にしています(↓サラムもがんばります)。

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© Samsa Film - TS Productions - Lama Films - Films From There - Artémis Productions C623

女性たちが既成の枠組みをぶっ壊すシーンが爽快です。しかも暴力ではなく、ことばと態度で。いくら脚本があっても登場人物が演じてくれなければ実現しません。名誉や社会にとらわれない美女たちがカッコいいです。

パレスチナ人のサラムは、通勤で検問所も通らなければなりません。

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© Samsa Film - TS Productions - Lama Films - Films From There - Artémis Productions C623

考え事をしていて、うっかり捕まったときに出会った軍人がサラムにとって大事な存在となります。軍人の執拗な介入がサラムにとって案外助けになるのですが、結構命がけです。ちなみにこの軍人は小市民的で怖くないですので安心してください。

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© Samsa Film - TS Productions - Lama Films - Films From There - Artémis Productions C623

独特な緊張感の中でせめぎ合う、愛と正義、理想と現実。パレスチナイスラエルの格差、そして各々の社会の格差、日常化した「占領」。そんな中で「こうなってほしい」という彼らの理想がメロドラマを通して表出します。

私にとっては日本の次に長く住んだ留学先が舞台で、友達みたいな人たちが出てくるので愛おしい作品でした。最初の方からかなり笑えますが、同時に胸が締めつけられます。現地に住んでいたことがある人は特にそうかもしれないです。

パレスチナイスラエルにとどまらず、ジェンダー、コメディー、中東、フムス、メロドラマ、スパイなどなどに興味をおもちの方、最近笑ってない方、幅広い層の方々に見ていただきたい作品です。

詳細はこちら:【テルアビブ・オン・ファイア】| 第31回東京国際映画祭

11月22日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか

コルヤのこと

私のイディッシュ語の先生のひとり、コルヤことニコライ・ボロドゥリン(Nikolai Borodulin)氏が、Adrienne Cooper Dreaming in Yiddish Awardという賞を取りました。

イディッシュ語新聞『フォルベルツ』の記事には、彼のちょっとした経歴、授賞式の概要などが書いてあります:
קאָליע באָראָדולין באַקומט „חלומען אויף ייִדיש‟־פּרעמיע לזכר חנה קופּער – The Forward

コルヤはビロビジャン出身、ニューヨーク在住のイディッシュ語話者です。家庭でイディッシュ語を聞いて育ったようですが、勉強をはじめたのはだいぶ大きくなってからで、それからすぐイディッシュ語の教師に抜擢されたそうです。最初は手探りでイディッシュ語を教えたそうで、「言語を教えるときには、図々しさが必要だ!」と私のこともいつも励ましてくれます。つまり、細かい間違いとかを気にしないで、ガンガン前に進めということです。私はイディッシュ語を教えるならバッチリ教えたいのですが、アジアの孤島でイディッシュ語を教えているので身近に聞ける人がいなくてちょっと心細かったりもするんです。が、5年前なら日本では考えられなかったイディッシュ語の授業が開講されたわけで、やるしかない!ということでここまできました。

彼は、日本で私がやっているイディッシュ語の授業を技術面で支えてくれている人のひとりです(今度出る『れにくさ』にコルヤと日本のイディッシュ語教育の関係を書きました。CiNii 雑誌 - れにくさ : 現代文芸論研究室論集)。

日本でも田中克彦氏などによって紹介され有名なイディッシュ語新聞『ビロビジャンの星』にも、最近とても積極的に関わっています。

コルヤの頑張りは本当にすごいです。オンライン授業のとき、彼の情熱と仕事がどれほどすごいかがわかります。大変なこともありそうですが、以前聞いたら「やりたいことをやっているんだ」とのことでした。ただただ尊敬です。ということで、今回とてもよかった!!

オンライン授業で知り合って、その後、初めて対面したときのこと:
syidish.hatenablog.com
コルヤにもらったイディッシュ・ビンゴ。効きます!:
syidish.hatenablog.com