ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

ことばのこと2「そうだら、いいだら、すけそうだら」

日本語だって、場所によってだいぶ違います。

イスラエルから帰ってきてから、新潟の親戚の集まりに行きました。自分の日本語が相手に通じているのに、相手の言っていることが自分には全くわからない経験をして、「ヘブライ語より日本語の方がわからないなんて・・・」と思いました。義理の母が通訳してくれて、やっと意味がわかりました。その時、義母は二つのことばを喋れるんだなということを知りました。ちなみに義母は若い時に新潟から東京に出てきたそうです。「母強し」。
ところで、私は富士市で生まれました。小学校入学前に富士宮市に引っ越しました。心のふるさとは富士宮です。ちゃんと覚えていませんが、その頃から「〜ら」「〜だら」と語尾につけることばを話すようになったと思います。

実母は小田原市出身です。実母(ここから先に出てくる「母」は実母です)からは、小学校に入ってから、「そんなことばはやめな」とよく言われました。私は無意識で国語の教科書の日本語と私の日本語は同じだと思ってましたし、母がなんのことを言っているのかわかりません。

小田原に母の親戚がいて、たまに遊びに行くと、叔父から「そうだら。いいだら。すけそーだら」とよくからかわれました。どうしてか、悔しくて涙が止まりません。「泣くともっと喜ぶよ」と母に言われ、泣かないように気をつけても止まらない。

私は号泣しながら、「そうれ。いいけ。すけそーけ!」と言い返したけれど、「『すけそうだら』には勝てないな」ということがよくわかっていました。

言い返しのことばの迫力も足りませんでした。小田原の親戚は「いいけ」はよく言ってたけど、「そうれ」とは言わない。それを言ったら、富士宮では「いいだら」というよりは、「いいら」です!でも「すけそうだら」の迫力はすごかった・・・。

小田原の方が富士宮よりは東京に近いし、都会だし、そういう点からも「ら」より「だら」のほうがダサくて、結局何をやっても叔父には勝てないというのがありました。今から考えると、「方言話者が別の方言話者を笑う」というありがちなパターンです。叔父、大人気ない・・・(残念ながらもういません)。

こんな恥ずかしいことを私もやってしまったのでした。

あるとき、富士宮の小学生として、津からの転校生を迎えました。ここから書くことは今から考えると申し訳ないので、書きたくないです。でも誤解を恐れずにいうなら、どうしようもなかった・・・。

私たちはその子の話す日本語がどうしてもおかしく思えて、笑ってしまいました。その子が本読みで指名されると笑いをこらえるので必死でした。話していても、言っていることは全部わかるのに、アクセントが全然違う・・・。衝撃的でした。ちなみに東京からきた転校生の日本語はそんなに違わないように感じました(転校生の方は感じていたんだろうな・・・)。

中学の時に静岡県に某私立の女子校に入り、また衝撃を受けました。

その中学には、地元の静岡東部の生徒、茅ヶ崎市(神奈川)から静岡市(静岡)くらいから通ってくる生徒がいました。そこは寄宿舎もあり、東京、横浜、名古屋、長野などの生徒が住んでいて週末だけ家に帰っていました。

学校で、(静岡にある学校なのに!)いつものことばを話していたら、「『ら』つけるの可愛い」とか、「『こばっちょ』って意味わかんない」と言われました。えええーー。

富士宮の友達とは「こばっちょ」と普通に使っていたような。「はしっこ」っていう意味です。その日まで、標準語だと思っていましたよー。

確認のためググったら、富士宮に「カフェこばっちょっ」て店がありました。(しかし敷地が広そうで・・・どこがコバなんだろう。行かなければわかりません)

https://tabelog.com/shizuoka/A2204/A220401/22028402/

あと蚊に刺された時に「(爪などで)かく」と同じように使う、使う「かじる」っていうのも東京や横浜の子には通じませんでした。「かじるって、腕かじるってびっくりした」と言われ、「かじっちゃだめだよ」ってよく使うので、方言だって信じられませんでした。

続く。