ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

エルサレムのこと雑感

さて、最近話題のエルサレムに関わる話です。最初に断っておきたいのですが、

私はどちらかを応援しているわけではありませんので、ご承知おきください。 

私もエルサレムに一年半住んでいました。ヘブライ大学という山の上にある大学の寮にいました。その寮にはいろんな学生が住んでいました。イスラエル生まれのユダヤ教徒、外国生まれのユダヤ教徒(移民)、地元のイスラム教徒、キリスト教徒、外国からの留学生・・・。寮の中では隣人同士、運命共同体なので、どういう立場であろうと、気の合う人とは仲良い人は仲が良いし、そうでない人とはあんまり話さないという感じでした。

日本でも仲のいい人とは、何区、何市、何県出身かとか普段はあんまり意識しないし、関係ないのと同じだと思います。

寮の中に仲の良いグループがあって、色々な宗教の人たちが集まって(ユダヤ人もアラブ人も)一緒に飲んだりしてました。

でも、個人的には仲が良くても、家族や国がかかわってくると、かなり気まずくなるってことがあります。とくにイスラエル独立記念日の時はきつかったです。一方は喜んでいるし、もう一方は沈んでいるし、悲しかったです。

イスラエル独立記念日は地元のアラブ人にとっては、ナクバ(アラビア語です。日本語には大災厄の日と訳すみたいです)です。

パレスチナ問題 - Wikipedia

1998年にドイツのボン大学でドイツ語夏期講座に参加した時のことを思い出しました。韓国からきた学生たちと、日本からの学生たちは結構仲良くしていて、毎日声を掛け合ってたんですが、8月半ば、彼らから全く話しかけてこなかったのでした。その時はドイツ語の授業に出て宿題をするので必死ですので、全然気がつきませんでしたが、ある日本人が「終戦記念日だ!」と気がつきました。第二次世界大戦は私たちの祖父母の世代のことですが、それでも、私たちが日本と韓国に属している限り、関係がありました。日本が終戦(敗戦)記念日の時、韓国は日本から独立したことを祝う光復節というのがあるとのこと。

光復節 (韓国) - Wikipedia

昔韓国人ガイドの金さんから「戦争はやった方はすぐ忘れるけれど、やられた方はずっと忘れない」と言われたことがあります。そのことを思い出しました。

トランプ大統領エルサレムを首都と認めると宣言したことに関して、大きなニュースになっています。

トランプ大統領 エルサレムをイスラエル首都に認定宣言 | NHKニュース

ユダヤ人たちの意見も割れています。ユダヤ人も一枚岩ではありません。いろんなところ人住んでいますし、イスラエルに住んでいるユダヤ人もいろんなところからやってきています。同じところに住んでいても、いろんな生活をしていて、考え方もそれぞれです。

日本人の考え方がみんな安倍首相と同じじゃないのと同様に、ユダヤ人たちの考え方も、イスラエルの人たちの考え方もネタニヤフ首相と同じじゃありません。Facebookなどではアメリカのユダヤ人の人たちが自分たちの(選んでもいない)大統領が今回の決定をしたことへの抗議文を載せていました。そんなには宗教的ではない知識層の人たちに多いです。トランプ大統領を支持すると表明した若い研究者を「フェイク学者」と非難する投稿もありました。あるイスラエル人は、トランプの発表を受けて、最近自宅付近に向かってロケット弾が発射されたとのこと。でも「完璧に迎撃した」とのこと。

私は複雑な気持ちになりながらも、次の瞬間、迎撃システムというものがうまく作動するものでよかった・・・。と、自分の身の安全のことを考えてしまいました。

しかし、また次の瞬間、ハッとしました。もう夕方でした。「やばい、早く家に帰って天ぷら作んなきゃ!」

原稿の締め切りを抱えているし、授業もあるし、毎日生きるのに必死な私は、とにかく家路を急いだのでした。

エルサレムに住んでいる知り合いたちはどうしているんだろう。住んでいる人たちは大変かもしれないし、普段とあまり変わらない生活をしているかもしれないし、ユダヤ人の皆さんはハヌカのお祭りで料理作ったりして忙しいかもしれません。

ハヌカー - Wikipedia

エルサレムの人と原稿のやりとりをしているのですが、首都の話がちょっと気になるから聞いてみたいけれど、原稿を早く仕上げないともう締め切りだし、別の原稿もあるし、「今どんなですか」と聞くのもただの野次馬だし・・・、ああ、今日の夕飯は何にしよう?!、今週末からの出張に無事行けるといいな!、インフルエンザの注射どうなるんだろう?来年うちの子は保育園と学童入れるのかな・・・と、いろんなことを思いながら生きてます。

ということで、こういった大事件のときは、皆さんの立場が表に出るなと改めて思いました。当事者や周りの人々や団体の立場や対立が、より鮮明になるなと思います。