ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

ホロコーストを生き延びた人たち

ホロコーストを生き延びた人たちに共通するのは、メンタルの強さだと思います。

私が知る限りですが。これまで会った人、映像で見た人、そしてホロコーストを経験した作家の文章は不思議とそうでした。彼らはポジティブで明るく賢いから生き延びられたのかもしれないし、生き延びたからそうなったのかもしれないし、分からないです。

ホロコースト生き残りの人の文章を初めて読んだのは自分が高校生のときでした。ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』(みすず書房 1985)という作品だったんですが、まず怖かったです。あと著者はすごく運がいいと思いました。狂気に巻き込まれない冷静さと知性をもって、毎日生きてるうちに最後まで生き残りました。

この本からは「大変なときでも今を生きる、それだけに集中する、それが大事っ!」と学びました(でも結局、無駄にジタバタしちゃいます)。

さて、今度は自分が2006年からエルサレムに留学していた時に、ホロコースト生存者の方々に会いました。初めててあった時はとても驚きました。彼はぼくの経験を話してもいいかい?とヘブライ語で言った後にイディッシュ語で語ってくれました。私はことばがありませんでした。

私の研究しているイディッシュ語は東ヨーロッパのユダヤ人が話していた言語なので、こうして調査をしているとそういう人に会うこともあるんです。でも会うのもそれを知るのもごくたまにでした。

直接会った以外は、ホロコースト生存者のインタビューの動画をいくつか仕事で見たんですが、いずれの方もポジティブで冷静で、ユーモアと愛にあふれる素敵な方々でした。ツィピ・ラインベンバッハが親のホロコースト体験の語りを撮影した映画『選択と運命』という作品ではイディッシュ語の語りが日本語字幕付きで見られます。

ヘブライ語児童文学作家ウーリー・オルレブ(和訳がたくさん出てます)を読んだ時にやっぱ生き残った人はメンタルが超強いなと思いました(生き残ったから強くなったのか分かりません)。

ところで、先ほど話に出てきた『夜と霧』は必読だと思います。昔は霜山徳爾訳しかなかったんで読むのが大変でした。一週間かけて読みました。くじけそうになりながら、なんとか読んだ感じです。じっくり読めてよかったともいえます。『夜と霧 新版』 池田香代子訳 (みすず書房 2002) はすぐ読めます。一回本屋でちょっと立ち読みしたら全部読んでしまって(ちゃんと購入しました)、むかし一週間かかったのはなんだったんだろう〜って思いました。どっちも読めてよかったです。