ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

「ドイツ語から見たイディッシュ語の特徴」by上田和夫先生

イディッシュ語のクラスを受講される方から、「ドイツ語とイディッシュ語を比べたい」というご要望がしばしばあります。私は比べるのがあんまり得意じゃないですので、長年イディッシュ語を研究されてきた上田和夫先生の論文「ドイツ語から見たイディッシュ語の特徴(1), (2)」(福岡大學人文論叢)をご紹介しようと思います。

これらの論文は↓PDFになっています。下のクリックすると、いきなりダウンロードできます。

(2)の冒頭の引用はかなりインパクトあります。例文は今の口語のイディッシュ語と違うものもあって、出典に興味があります。イディッシュ語も他の言語と同様、時代や地域、話者集団(その言語を話す人たちのグループ)によってだいぶ違うので。引用というより話者に聞いたんだろうか。いずれにしてもドイツ語とイディッシュ語の比較をさらっとしたい方におすすめです。
「ドイツ語から見たイディッシュ語の特徴(1)」by上田和夫

https://fukuoka-u.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=990&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=13&block_id=39
「ドイツ語から見たイディッシュ語の特徴(2)」by上田和夫

https://fukuoka-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1012&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

上田先生が研究に使われた超貴重なイディッシュ語の本や雑誌の一部を譲り受けました。それを見ると先生が非常に真剣に丁寧に文献研究をされたということがよくわかりました。私が上田先生に初めてお会いしたのは、2011年に博士論文を書いたあとでした。上田先生もその頃大学書林から『イディッシュ語辞典』を出されて(イディッシュ語研究が日本でなされていることが話されるときにいつも引き合いに出される世界的に有名なガチな辞書です)、出版記念の講演をされた時でした。

イディッシュ語辞典 - 株式会社大学書林

初めて会った瞬間、お互いにイディッシュ語が大好きなことがわかりました。上田先生は当時九州にお住まいで、私は東京で、それまでは手紙でやりとりさせていただいたのです。直接お会いして、物理的にも精神的にもなんだか急に距離が縮まったのを覚えています。

上田先生は文献研究が中心、私はフィールドワークが中心ですので、研究手法も全然違うのですが、事実に基づきイディッシュ語の世界を探究する姿勢が同じことを知りました。上田先生からいただいた本や、共通のユダヤ人の知り合いから聞いた話でそれがよくわかりました。

ある言語の研究にかかわるとき、私は話者の世界観を学びそれを尊重することは非常に大事だと考えています。その言語の所有権は、彼らにあるのですから。