健康診断でした。最大の難関はバリウムそしてそれに続く胃の撮影です。
昨晩9時からプチ断食しているのもこのためなのです。
会場では私の前の人は発泡剤がどうしても飲み込めず、すごく苦しそうでした。
その人の声が聞こえてきます。発泡剤はともかく、迫りくるバリウムの恐怖を感じました。
発泡剤飲み込み用のブースには、いやし効果がありそうな、
いわゆるヒーリング・ミュージックが流れていました。
そのおかげで、緊張や恐怖もやや緩和されました。
こういう音楽って本当に効果あるんだなと思いました。
今訳してるヘブライ語児童文学では、音楽の大会のことがでてきます。
「あの主人公もこんな気持ちでステージに立ったのかな」なんて思いました。
(今月はこれにかける時間が多いので、この文章の調子が作品と似てきます)
発泡剤というのを口に入れてから、それをちょっとのバリウムで流し込むようにとのこと。
保健師さんが私の隣でじっと見守ってくれました。
「ゲップは検査が終わるまで我慢してください」
と言いながら。
噂では最近のバリウムは「だいぶおいしくなっている」と聞きました。
安心していましたが、バリウムのコップは持ったときにだいぶ重かったです。
やっぱりバリウムだな。
紙コップに入ってるくせに半端ないその重さからも牛乳じゃない、これはバリウムだ。
もう自分へのごまかしはききません。
「いよいよ、始まったぞ、始まったんだから、あとは終わるだけ」
自分にしてはいさぎよくて、かっこ良かったと思います。
発泡剤を飲み込むと、次は撮影ルームに移動です。
撮影といっても、胃の撮影です。マジでやらないと。
バリウムを片手に持ちながら、重くて厚い扉の向こうに入っていきました。
撮影ルームには、動くベッドみたいなものが立って、私が乗るのを待ってるはず。
かつての「ルーレットマン」↓を彷彿させます。
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といっても、レントゲンの「ベッド」は、かわいい黄色をした、もっと真面目な長方形の台でした。
「ついにのぼるんだな」
気持ちを強くしてバリウムと進みました。
「今、ここ」と向き合うだけ。
胃の撮影は放射線技師がやってくれることになってます(まだこういった検査をやったことがない人のために補足しとくと)。
放射線技師は、撮影室のガラスの向こうにちょうどラジオのDJみたいに座ってます。
こっちを見て、ガラス越しにマイクで優しい声で指示出ししてくれます。
技師の指示に従ってバリウムを飲み込みました。
(最後の一口が苦しかった)
バリウムのコップを横にあったゴミ箱に投げ捨て、
「よし!行くぞ」
って思いました。
いよいよです。
「ルーレット、スタート!」
って心のなかで叫びました。
技師の声は優しくていやされたんですが、実は聞こえにくかったです。
「もっと大きな声で言っていただけませんか」
とはいえませんでした。
胃の撮影がつつがなく終了しますように。
そのきっとすべては彼にかかっているのです。
だから彼からの連絡をとにかく注意深く聞きました。
「はい、ベッドの上で一回転してください」
(といっても硬い。一回転はバク転ではなく、寝返りみたいな感じです。こうやって動くことで、胃の壁にバリウムを塗りつけます。まだやったことない人のために言っておくと。)
「左側に向いて、はい、もうちょっと正面」
私には見えてないが彼にはきっと見えてるだろう私の胃。
ベストの状態で撮影されるように注意をはらいます。
「今度は右です。もうちょっと正面向いてください、はい、いいですよ」
聞こえにくい技師の声。
それに集中しようとしているうちに、それがどこか遠くからの声のように思えてきました。
「また右にぐるっと回ってください」
一日経った今となってはもうちゃんと覚えていないけれど、こんな感じだったと思います。
去年は悲劇が起こり、検査の途中で新しく用意された追加のバリウムを飲むはめになりました。
今年はそれだけは避けたい、私は技師との共同作業に必死でした。
結構途中きつい体勢もありました。
「ハンドルに捕まって自分の身体を支えなければ、あの、安全ストッパーがあるところまですべってしまう!」ってくらいに頭のほうが低く下がっていきました。
筋力不足の私は、「おばあさんになったらこの検査できるかな・・・」と思いました。
最後の一枚を撮影する瞬間、大きなゲップが出てしまいました。「大丈夫だったんだろうか」
きっと技師には私の胃が見えているんだから大丈夫だろう。
追加のバリウムや発泡剤への恐怖をかき消しました。
「はい、終わりです」
技師の声でした。
保健師さんが撮影室から出るように促してくれました。
「終わった。終わったんだ」
やり遂げた気がしました。
その後採血がありましたが、全然だいじょうぶでした。
(去年はさしても血がなかなか出なくて、すごい痛い思いをしたんですが、今年は大丈夫でした)
良かった。やった、やったよ・・・。 続かない。