ユダヤ人と言語 Jews and Languages

Yiddish in Japan みんな何かでマイノリティ

丸山正樹さん講義1

今年2018年2月に単行本『龍の耳』が出たばかりの丸山正樹さんに国立障害者リハビリテーションセンターでレクチャーをしていただきました。

前回(丸山正樹さんと手話の世界 - ユダヤ人と言語 Jews and Languages)に引き続き、レクチャーの内容を紹介していこうと思います。

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『龍の耳を君に』(東京創元社)は、松本清張賞で惜しくも2番になった『デフ・ヴォイス』という作品の続編。『デフ・ヴォイス』は単行本が出てから数年で読書メーターに取り上げられ、文庫本化、その後売れ続け、重版が続いてもう6版!!!どこまで行くでしょうか?!たくさん版を重ねられると良いですね!

丸山さんは版を重ねるごとに修正を入れてきたとのこと。誠実〜(私も今昔書いた本の修正をしてますが、自分の文章と向き合って直すの大変)。

いくつかの短編を合わせた『龍の耳』は、丸山さんが『デフ・ヴォイス』みたいな作品はもう無理かなと思っていたところに、短編を書いてみませんかというご提案が出版社からあって書き始めた作品みたいです。かっこいい出版社です!

いずれにしても聴者(聴こえる人)である丸山さんがろう者の世界を書くという画期的な作品で、しかもろうの方々からも受け入れらているそうです。「書いてくれてありがとう」と言われたみたいです。

聴者にはわからないろうの世界、ディープな手話の世界、コーダ(ろうの親の元で育った聴者)の世界、障害者の世界を丸山さんが調べたり、聞いたり、経験したりして作品に仕上げていかれたようです。丸山さんご自身も何年も手話を勉強していらっしゃいます。

フィクションは設定も自由で、(論文と違って)事実を書かなくて済むし、事実を自分で再構成して書くこともできそうで、そこがやりやすそうです。でも背景とか伏線とかもご自分で考えなきゃいけないのは大変そうです。フィクションも現実から生まれて現実の一部になるし、誠実にていねいにやる必要がありますね。小説の伏線や背景にも、丸山さんの誠実さや情熱が見えてきます。

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なんかこの話昔どこかで聞いたようなとか、最近ニュースでよくみるよなみたいな話が出てきます。自分と同時代を生きている作家が最近書いた作品を読むって、そういう点でもすごいことだと思いました。読者に近い作家なのでしょうね。

ちなみに法律や障害、手話の話で難しい用語も出てくるのですが、主人公のアライさんが調べてくれたり解説してくれます。なんとも親切な小説で、読者を最後まで導いてくれます。丸山さんのお人柄を感じます。

私も、フィールドワークの内容や読んだことを文章にまとめたり発表したりします。いろいろ複雑なことを自分で整理する必要があります。楽しいですが、そのコミュニティの苦悩や、自分のかかわりかたを考えたりしながら、他の人たちにどう伝えようかと思いを巡らせます。世界は知らないことだらけで複雑なので、結構苦労します。さらに読みやすい文章でまとめるのは大変です。

新作は、新宿紀伊国屋でサイン本平積みになったとのこと(これ本業界ではすごいことみたいですよ)。丸山さんすごいと思います。(つづく)