ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

「共訳者のことば」が強烈!『うつりゆくこそ ことばなれ』

田中克彦先生と亀井孝先生の「共訳者のことば」が壮絶な『うつりゆくこそ ことばなれ』(エウジェニオ・コセリウ著 クロノス 1981)。三人の本気さが伝わってきます。紙とインクの世界の凄さ。

Sincronía, diacronía e historia: El problema del cambio lingüístico [Eugenio Coseriu] (Madrid 1973)

共訳者たちが何ページにもわたって激しく書き合っています。「共訳者のことば」が  I、II、そして追記(I)、(II)、(III)、さらに付記まで続き、かなり自由に綴られております。翻訳をされる方は、大変で悩んだときに読むと元気が出るんじゃないかと思います。

この本は田中克彦先生の授業の教科書でした。一応割引で売ってくれた気がします。授業の後で近所のサイゼリアでワインを飲んで、なんだかとても自由に話しました。本当に懐かしいです。

新学期に「ねえ、きみもいかない?」と、この授業に連れて行ってくれた先輩には、今でも大変感謝しています(その時この授業は自分の学年はまだ受講できなかった気がします)。

この本には授業中に自分でしたいろんな書き込みがあって「変化はたんなる偶発的なできごとではなく、言語の本質に属している」(p.85)というところに赤い線が引いてあったり、「変化とは破壊ではない」と書いてあったり、なぜか「フンボルト」、「ベルリン」、「タダ、試験なし、卒業は決まっていない」と書き込みがあったり、チュニジア料理店のビラが入っていたりします。しおりにしていたっぽいです。とにかく、変化は乱れではなく、いいこと、発展で、生きているということだということを学んだんだと思います。なんか興奮しながらいろいろと書き込んだのを覚えてます。かなり内容が濃い本で、著者も訳者も大変だったと思います。田中先生の本とご本人との出会いが私のイディッシュ人生の全てのはじまりでした。f:id:syidish:20200512151534j:image

激しい「共訳者のことば」はこうしめくくられています。亀井先生、「ついにあきらめて」ということで悔しさが伝わってきます。f:id:syidish:20200512151825j:image

ドラマだな。。。じーんときます。著者も訳者も本当にありがとうございました。

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#BookCoverChallenge #Day12