ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

訃報

最近訃報が多いなと思っていたのですが、坂本龍一さんも亡くなってしまったのですね。とても残念な気持ちになりました。

実はイスラエルイディッシュ語詩人リフカ・バスマン・ベンハイーム氏も先日亡くなり、ラディノ語(イスラエルではユダヤスペイン語よりもラディノ語と呼ぶ方が一般的です)ジャナーリストのモシェ・シャウル氏も亡くなりました。みんなの精神的なリーダーになってマイノリティ言語の活動を支えてきた人々がなくなると、目標とか心のリーダーが消えていくような気がしてしまいます。

リフカ・バスマンの深い悲しみを帯びながらも力強い詩は、いつもエネルギッシュで、生きようという気にさせてくれました。実際彼女はスリムで小柄なイメージでしたが、厳しい顔立ちをしておりとても力強い女性でした。ホロコーストで家族を失ったにもかかわらず、強い精神力を保ち、詩人としてイディッシュ語ホロコーストにかんする作品を作り続けは人です。イディッシュ語の集会では彼女の周りに人だかりができて、みんなが彼女の話を聞いていました。彼女がいないところで、いろんな人が彼女の健康について心配していました。

モシェ・シャウル氏はイスラエルの公共放送でラディノ語(ユダヤスペイン語)のラジオ番組のディレクターをした他、雑誌『アキ・エルシャライム(ここエルサレム)』で長年編集長をしてきた人です。この雑誌によってこの言語の正書法が作られました。実はラディノ語の正書法は今も定まっていませんが、研究者や言語継承の活動家が自分でつづる場合は「アキ・エルシャライム方式」の方が標準的です。

私はラディノ語(ユダヤスペイン語)に興味を持つのが遅かったので、直接お会いするチャンスをつかめませんでした。大学書林から出版されたユダヤスペイン語の語彙集を作った上田和夫先生(同じく大学書林から出ているイディッシュ語の辞書や文法書も作られて、そちらで有名です)は、親しくしていらっしゃり、会われたんじゃないかと思います。先生の語彙集もアキ・エルシャライム方式を採用しています。

いろいろな人からモシェ・シャウル氏の話を聞きますが、すごく優しそうなのにとても情熱的で、ラディノ語を深く愛していたんだろうなと思います。正書法を決めるのは、研究や思い切りが必要な上、とても政治的なことも必要そうで、大変そうですが彼がそれをやり遂げたのはすごいなと思います。

他にも最近、映画とミュージカルの『屋根の上のヴァイオリン弾き』の主人公や、ラディノ語研究者、日本の有名人、近所も人が亡くなっていて、なんだか訃報が多すぎる気がします。

コロナを経てかなり疲れが出ているのかもしれません。みなさんもお身体をお大事に。私もそうします。