私にとっては難解な本でしたが、有好さんがとても読みやすく訳してくれているので、どんどん読みすすめられます。
ニコルソン・ベイカー 著 有好宏文 訳
これを訳されたなんて、翻訳者の有好宏文さん、すごいと思いました。
いろんな知識があって、すごく頭の回転がはやい人の話を聞いてるときと似た気分になります。知らないことがポンポン出てくるのですが、有好さんがしばしばイメージつきの注をつけてくださってます。自分で調べなくても読み進められるし、かといって、文章の邪魔にもなってません。
私も翻訳するときに、原文の面白さをそのまま伝えられたらと思う一方で、説明を入れるか、わかりやすく言いかえるか、迷います。他の翻訳者にも相談しますが、みんなそれぞれのポリシーをもっているようです。それぞれの人が、ジレンマを抱えている(いた)こともわかります。
有好さんは、難解だけれどものすごいスピードで進む勢いある作品を、こうやって日本語にしたんだなと思いました。翻訳者魂を感じ、刺激されました。
有好さんの訳者あとがきには、「いまは、逆立ちでフルマラソンを走ったせいで、逆立ちでしか走れなくなったひとのような気持ちでいる」と書いてあります。
私もほんのちょっとだけイディッシュ語に関係あるところをお手伝いしたので、いただきました。こんなにすごいのを訳す方がいらっしゃるなんて、刺激されますね。
内容説明
「読者」と「作家」の奇妙で切実な関係
独特の緻密かつマニアックな作風で日本でもコアなファンをもつ著者が、大作家アップダイクに対する思いを綴った自伝的エッセイ/ノンフィクション。
アップダイクを「読まずに語る」!『中二階』、『室温』、『もしもし』など、独特の緻密でマニアックな作風で知られる著者が、大作家ジョン・アップダイクへの思いを語った自伝的エッセイ/ノンフィクション。