ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』2月7日ロードショー

狛江FMの今日の放送で紹介しました。公開中。ぜひ見に行ってみてください。

 

久々に帰省して感じたギャップ、ありませんか?

ローカルな束縛と閉塞感に葛藤する人がロンドンにもいた。。。と感じる映画です。

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『ロニートエスティ 彼女たちの選択』映画をみました。「選択」、「自由」、「女性」がキーワードかとおもいます。

英語に日本語が続きます。

I saw the movie Disobedience (2017) at a preview and sharing my commnets in Japanese. This film is based on the noovel by Naomi Alderman, directed by Directed by Sebastián Lelio, written by Sebastián Lelio & Rebecca Lenkiewic.

ユダヤ教徒の話で、ちょっとイディッシュ語も出てきます。

超正統派の女性エスティ(写真中央)とその夫ドヴィット(右)、もと超正統派の女性ロニート(左)の複雑な三角関係が描かれています。三人は幼なじみでした。

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©2018 Channel Four Television Corporation and Candlelight Productions, LLC.  All Rights Reserved

ロンドンの超正統派ユダヤ教徒とそこから飛び出した女性という一見マイナーな設定は、私たちの日常のジレンマを浮き彫りにします。

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なんだか気になる問題児のロニートが、昔属していた超正統派コミュニティーのラビの死をきっかけに、コミュニティを再訪します。コミュニティにとって、ロニートの行動や発言の一つ一つが、タブーで、みんなにとっては刺激的です。

ニートが現れると、いつも何か起こっちゃいます。昔も色々あったようです。コミュニティの人たちのロニートへの視線や声がけからもそれをうかがうことができます。それでニューヨークに住んでいるのか。正統派コミュニティーから出た人は大変だと言う話を聞いたことがあります。ロニート苦労も計り知れません。彼女はプロの写真家として生計をたてています。

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ニートばかりが気になっていた私ですが、なんだか途中からエスティがめちゃくちゃ気になるようになってきました。エスティ、心配すぎる。ドヴィットさんも、随分心配してくれていて、エスティの言いたいことも受けよめてくれます。信頼できそうな優しい人です。

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最初のシーンで亡くなるその地域でとっても尊敬されていたラビにお別れするためにロニートはロンドンに戻ってきたのですが、これが仲良し三人組の関係やコミュニティをざわざわさせます。

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ちなみに、ラビの最後のことばが大事です。途中で明らかになる、ラビとロニートの関係にも注目です。

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この作品では、日本でも割と身近な村社会の問題も見えてきます。そしてそこで女性が負っている社会的地位や責任への疑問がテーマになっています。この映画は、我々には「選択」の余地があるのはないかという疑問を投げかけます。「女性」に課せられがちな結婚、家事、出産、育児という社会的責任への問いかけがあります。既存の「責任」に答える必要があるのか、女性に選択の余地はないのかは、我々にとってもシビアに受けとめたい問いかけです。

というのも、皆様ご存知の通り、スイスの国際機関の調査によれば、日本の女性の社会的地位は153か国中、121位(2019)らしいです。統計の取り方にもよると思いますが、最下位付近ですし、遠慮がちに言っても、とりあえず改善の余地はあると考えて良いでしょう。

エスティがロニートに「出た人はいいよね」みたいにやつあたりするシーンもあります。地元にとどまるのも大変だし、新しい土地で生計を立てていくのも大変だと思います。

結局、選択肢を手に入れた彼女の選択とは?!「自由」とは、結局心の中にあるものなのだと気づかされます。

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この映画を見ていて、これまで超正統派やそれをやめた当事者から聞いた話をいろいろと思い出しました。私は超正統派の知り合いは少ない方ですが、それぞれの登場人物に重なるような知人がいました。日本人からしたら驚くようなことが多いかもしれませんが、たまに聞くような話が組み合わさったような映画で、超正統派の世界について知りたい人には大変参考になります。

BBCのこちらの記事も興味深いです:

私の秘密――同性愛を否定する宗教と家族で育ったが…… - BBCニュース

この映画の原作のDisobedience(2016)の作者ナオミ・アルダーマンもとっても気になります。

ヒューマトラストシネマ有楽町、恵比寿ガーデンシネマにて、2月7日からロードショーです。

うーん、コミュニティに愛されるラビって素敵ですね。ラビが亡くなったので若手が後継者になるんですが、その人もとても素敵です。

超正統派社会を身近に感じること間違いなしの期待の作品です。個人的には日本でどんな反応があるのか、楽しみです。

www.phantom-film.com

 

第90回アカデミー賞外国語映画賞受賞(『ナチュラルウーマン』)セバスティアン・レリオ監督作品

出演:レイチェル・ワイズレイチェル・マクアダムスアレッサンドロ・ニヴォラ
製作:フリーダ・トレスブランコ、エド・ギニー、レイチェル・ワイズ
監督:セバスティアン・レリオ 脚本:セバスティアン・レリオレベッカ・レンキェヴィチ
原作:ナオミ・オルダーマン 撮影監督:ダニー・コーエン
配給:ファントム・フィルム
2017年/イギリス/英語/DCP/カラー/114分/原題:Disobedience