ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

Moishe Nadir(既婚者の詩)

イディッシュ語作家モイシェ・ナディ(ー)ル(Moishe Nadir)の短編を読みました。
結構簡単そうに見えて難しいけれども面白いです。I. B. ジンガーが好きな人も、こちらも読んでみたら楽しめるんじゃないかと思います。
気になった作品があったのでメモのために、ちょっと訳してみました。(かっこ)は私のひとりごとです。

作品集Naridgang, fun 1900 biz 1937 の、"Lider fun a farhayratn man"「既婚者の詩(結婚した男の詩)」という分類の中の作品です。1911年の作品です。100年前のこと。

「仲違いしてはいけない」"m'darf nisht broygez zayn"
 仲違いしてはいけない
 男は男、女は女
 この世界ではずっとそうなのだ
 男のあるべき姿は、駆け回る犬
 女のあるべき姿は、善き信仰の天使
 そして子どもたちは分類される、
 犬たちと、天使たちに。妻よ、
 だから仲違いしてはいけないのだ(仲違いはやめよう、とか)

「静けさ」"shtilerhayt"
 ぼくのためにネクタイやシャツを洗い、(ネクタイは自宅で洗っていたのだろうか)
 ぼくのためにハンカチをアイロンでのばす
 ぼくにできるだけ良い食べ物を与え
 ぼくにありったけの愛をくれる(ぼくを愛情で満たしてくれる)

 ぼくの心を心配し、彼女は心を折っている
 (中略)
 はちみつの上でぼくの人生を焼き(bake)
 それはもう甘くて、すごく甘くて!

 ぼくを愛している。ただ、ただ、愛している
 (略)

「静けさ」の和訳は主語を省きましたが、原文では「彼女」です。読みにくかったので取りました。それにしても訳って難しい、奥が深いですね。

夫婦という関係って素敵だな、良いものだなと思いました。
コロナ関連のドキュメンタリーでもいろいろなご夫婦がでてきて、本当に考えさせられます。

↓このPDFの52ページ(Naridgang, fun 1900 biz 1937、Moishe Nadir)
https://ia802705.us.archive.org/9/items/nybc200507/nybc200507.pdf