東京大学 の先端科学技術センター(私も研究員として所属してます)で、映画『もうろうをいきる』先端研上映会とトークセッション | イベント | 東京大学 がありました。
この映画は、都内のいくつかの映画館で公開されています。予告編だけでもぜひご覧ください↓。
VIDEO youtu.be
(映画『もうろうをいきる』公式サイト はこちら)
将来的には全ての映画に字幕と音声をつけようとしている大河内直之先生たちが開発されているアプリUDCastの紹介もありました。
(UDCast - 全てのコンテンツに字幕と音声を はこちら)
『もうろうをいきる』は、もうやろうの人、全もうの人が出てくるドキュメンタリー作品です。見えない、きこえない環境でその人たちが周りの人たちとどのような関係を築いて人生を歩んでいるのかが描かれています。
出演者の人生が描き出されていてとても感動的でした。私も途中何度か涙を流しましたが、会場には他にも泣いている人たちがいました。
司会進行、トーク セッションでは手話通訳に加えて、文字通訳もありました。全もうの福島智 先生は指通訳で参加していました。指通訳はお母様が開発されたとのこと。UDCastでも内容が追えたとのことです。
トーク セッションでは、私は主に耳からきいた情報で内容を理解していました。ただ、ちょっときき逃したり、自分の中で内容を整理しきれなかったときは、しばしば、左のスクリーンに書き出されている話の内容を見ました。誤解を恐れずに正直なところを言うと、とても助かりました。
特に熊谷先生のお話は(自分にとってかなり新しいテーマだったのですが)、自分の研究と関係が深かった・・・。
最近目があまりみえなくなってきているという人が会場にいらっしゃいました。フロアからのコメントを求められたとき、こんなことをおっしゃってました。サポートがあっても映画の内容を追うのが精一杯だった、自分にとって(見えてたときは)映画は娯楽だったんだなと思ったとか、ずっと内容を追っていくのが大変だったから途中休憩を入れて欲しかったといったことでした。
彼が大変だったというのは、外国語学 習を始めたばかりのときに、必死で字幕をみながら映画の内容を理解しようとするときみたいな感じでしょうか。今まで見えていたものが見えなくなっていくときの不安や複雑な思いを抱えながらのことだったんじゃないかと想像します。
そんな中、私はイスラエル に留学しているときのことを回想しました。私はもうの先生にイディッシュ語 で研究の指導をもらっていました。先生はたくさんの本を読んでいて、たくさんの人を知っていました。熱湯を使って、紅茶を入れて、お茶菓子にモーツアルト チョコを出してくれたこともあります。そんな先生があるとき、「ぼくも目が見えなくなったときは最初はパニックだったよ」と話してくれました。
途中から見えなくなる人は、状況に慣れるまではかなり大変なんだろう、そして、だんだん見えなくなる時はとても怖いんじゃないかと想像します。
映画『もうろうをいきる』をみて、言語とかコミュニケーションというものについてもう一度考えました。とくにもうの人との会話についてです。私はイディッシュ語 やヘブライ語 は話せるけど、日本手話は5つくらいのことしか話せません(しかもかなりあいまい)。メールでは直接話せる相手と、会った時は手話通訳をしていただかないと話せません。相手のことばが話せたら、もっと距離感が縮まるんだうなと思いました。
今年の夏にエジプトやトルコに行ったときに、現地の人とのコミュニケーションの際、アラビア語 が話せればとかユダヤ ・スペイン語 (ラディノ語、ジュデズモともいう。イスタンブル のユダヤ 人の中にまだ話せる人たちがいる)が話せれば・・・と悔やんだことを思い出しました。
単に言いたいことが通じることばかどうかっていうだけじゃなく、そしてそれぞれの人の心に突き刺さる・響くことばかどうかっていうのがあるんだろうって私は考えてます。
トーク セッションが終わり、イベントがおひらきになった頃、手話通訳の方々(何人かが交代でやっている)が、ここの手話はこんな風にしていたけど、こうした方がいいよとか、反省会をされているのを垣間見ました。毎回鍛錬を重ねられているんでしょうね。私も頑張ろう!と思ったのでした。
また今回の会場では、さまざまな言語が飛び交っていました。「そこにいた人たちの頭や心の中ではいろんな複雑な情報が整理されていたんだろうな」などと考えながら代々木上原 の箱根そば で天ぷらそば を食べたのでした。
トーク セッションの登壇者: 登壇者:西原 孝至(監督)、山上徹二郎 (本作企画・プロデューサー)、熊谷晋一郎(先端科学技術研究センター 准教授)、福島智 (先端科学技術研究センター 教授・本作出演) 司会:大河内直之(先端科学技術研究センター 特任研究員・本作企画)