今日はこちらの本を紹介します。500年前のスペイン、バスク地方の実話をもとにしたお話です。
マラーノ文学・歴史叢書『約束の丘』行路社(2001)
コンチャ・ロペス・ナルバエス 著、宇野 和美 訳、小岸 昭 解説
私はこの本について、翻訳者の宇野和美さんから教えていただいて知りました!20年前に、セファルディ系ユダヤ人や改宗ユダヤ人についてこんなにわかりやすく書かれた本の和訳が20年前に出ていたなんて。読んで大興奮しました。
本には小岸昭先生の解説(充実しているのでぜひ読んでください)がついていますが、私の視点から書かせてください。
セファルディ系ユダヤ人は、1492年前にスペインから追放されたことをアイデンティティの柱としてとても大切にしています。セファルディ系ユダヤ人は、500年前のスペインで「死ぬか、改宗するか、出て行くかを迫られた」と、うったえるような目をしながら私に話してくれます。こちらも彼らが普段押し殺している感情が、1492という数字とともに滲み出てくるのを感じます。当時ユダヤ人は、ユダヤ教からキリスト教に改宗しなければ殺されてしまうので、キリスト教徒になりたくなかったら、長年住んだその土地を離れて出ていくか、出ていかないで殺されるしかなかったと。
私がパリで会っているのは、ユダヤ教徒であり続けることを選択し、スペインから出てきた人たちの子孫です。これまで彼らから「死ぬか、改宗するか、出ていくか」だったと話をきく機会はありました。今回、少年たちとその家族の日常を引き裂くストーリーを通して、セファルディ系ユダヤ人の苦難の一部をより具体的に知ることができました。
彼らが地域社会や財産を失い、長年住んだ土地を去らなければならなかったのは理不尽です。悲しく、辛く、悔しい気持ちになりますが、最後、救いのあるお話で、新たな世界を知って、ちょっと自分も変われたような気にもなります。
大人にとってもかなり読み応えのある内容ですが、ふりがながついていて、内容が魅力的なので、読書の好きな子であれば読み進めることができると思います。ユダヤ教や歴史については少し難しく感じられるかもしれませんが、少年たちの冒険と運命に注目して読めば読破できるでしょう❗️
訳もとっても読みやすいのですが、この裏には訳語や訳文の選択や、用語の確認など、大変な作業があったのだろうなと思いました。
著者のコンチャ・ロペス・ナルバエスさんの「読者のみなさんへ」もぜひ読んでください。私もいろいろな人のお話をうかがって調査をすすめる中で、ナルバエスさんと同じように感じています。
宇野和美さんにいただいた、とっても貴重な一冊です。ぜひ多くの方々に読んでいただきたいです。