ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

自分も大変だったので

パリに住んだことのある人は経験があるかも知れません。パリでは「自分も来た時大変だったので」と言って助けてくれる人たちが多いと思います。今日は北アフリカ出身のエンジニアが助けてくれました。彼は日本の某有名大学に留学する予定だったけれども、3.11の影響でキャンセルになったといいます。

彼とそのパートナーとばったり道で会って、日本とフランスについて話しました。最初は普通の話をしていたんですが、個人的な事情とかも話しはじめたら、結局3人で1時間くらい立ち話をしてしまいました。彼はこれから私がパリでどうすれば良いのかレクチャーしてくれました。彼のように、初めて会ったのに、パリについてからやるべき手続きを教えてくれる人たちがいます。人によってちょっと違います。それはその人の立場やビザや経験が違うからだと思います。自分が困っていなかったら、いろいろな種類の手続きについて聞くことはなかったと思います。彼らも、困った経験がなかったら、面倒な手続きを知ることなく生活できたんじゃないかと思います。みんな通る道なのかもしれないけど険しさはいろいろだと思います。

私もこうしてアドバイスを受けながら、できる手続きをちょっとづつ進めています。多くの場合、一発ではうまくいかず、何度か銀行や事務所を訪ねます。列もできていて結構待たされるのですが、何度も行くとうまくいったりします。

行ってからも担当者が誰か分からず、たらいまわし的なことになることもあります。私はフランス語がほとんど分からないので、なおさら大変なのかなと思います。

イスラエルだったら、ことばもわかるし、行った先に知り合いの知り合いくらいの人がいたりして、もっとすんなりいくんじゃないかと思ったりもします。イスラエルに初めて行った時はイスラエル政府奨学金だったので、ありがたいことにイスラエル大使館などに手続きをしてもらえました。最初ヘブライ語が分からなかったのですが、英語はもちろんイディッシュ語も通じたので結構楽でした。今は英語も通じますが、手続きにはフランス語がとても大事だと思います。Google翻訳にとてもお世話になっています。

さっきのスペインと北アフリカ出身のカップルと別れる時、彼は私に「自分も助けてもらったから今度は助けたいんだ」と言っていました。パリにはそう言ってくれる人がたまにいて、みんな苦労しているんだなというのがよく伝わってきます。後で助ける側に回ってくれる人がいるのは、本当にありがたいことです。

北アフリカ出身の彼はフランスの国籍も手に入れたとのこと。カードを見せてくれました。もともと研究者だったそうですが、雇用条件が悪く、生活の安定のために会社に就職したそうです。就職の仕方も教えてくれました。本当は研究がしたいのに、雇用条件が悪すぎて諦めたとのこと。大事な研究テーマを見つけながらも苦渋の決断をしなければならない時があるのだと思います。それかめちゃくちゃになりながらやるかでしょう。

彼のパートナーは、スペイン人で、博士課程にはいかずに、よさそうなところに就職をしたそうです。彼を見ていたら博士課程が大変そうすぎて進む気にはなれなかったとのこと。スペイン出身なのでEU内での就職は同じでの就職と同じ扱いで、手続きなど全く問題なかったとのこと。私もビザやを作る時にEU出身だったらこんなに大変な思いをしないのにーと、羨ましいなと思ったことを思い出しました。

EU内ってすごい良いよねー、でもイギリスとかアイルランドはもうEUじゃないから違うんだよねーと、内か外かのその落差に我々は気が遠くなりました。

パリは10月はとてもあたたかかったのに、11月に入ったらすっかり寒くなりました。外を歩くと頭や脚が冷えます。でも今日は心があたたかくなりました。

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研究室に行く時に使う、きれいな駅の写真。