ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

『銀河の果ての落とし穴』エトガル・ケレット

イスラエル発、人気作家エトガル・ケレットの作品の新刊が出ました。超短編です。今回も現実と謎の不思議な世界が炸裂しています。

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ストーリーがよくできていて、どの話も凝ってます。面白いけど、たまにえぐいです。

私たちの社会はこのままでいいのだろうかというケレットからの問題提起には共感する人は多いのでは。

個人的には犬が出てくる「アレルギー」、天使が出てくる「汗」、アメリカのホームレス支援に疑問を投げかける「GoodDeed」が好きでした。ユダヤ人の話に天使がでてくるときは、面白いことが多い気がします。面白くて悲しくて、ギリギリのラインちょっと超えてるんじゃないかな。と思わせる作家です。

 

著者のケレットの来日イベントが予定されています。

ご興味のある方へ:満席のイベントもいくつかあるときいています。ご確認の上お出かけください。

10月12日 東京甲南大学キャンパス 映画上映&トークイベント(ケレット &シーラ 司会:秋元孝文)
10月13日 新宿紀伊国屋 トークイベント(with 倉本さおり)
10月19日 神戸甲南大学 映画上映&トークイベント(with 西加奈子


映画祭
9月30日ー10月2日 神戸甲南大学
10月5日ー10月18日 京都 出町座 10月16日にケレット&ゲフェン来場 トークイベント(with 藤野可織
10月12日ー10月18日 神戸 元町映画館  10月17日にケレット&ゲフェン来場
10月25日ー10月27日 東京 VACANT

イディッシュ語で書かれたユダヤの新年のこと

ユダヤの新年が近づくと、メールやSNSで「良い甘い年を」とユダヤ暦の新年のご挨拶が送られます。日本の年賀状やそれ的な投稿、年賀状メールに近いです。ただ年明け前から送られているのが違うなあと思います。

20世紀半ばに書かれたイディッシュ語の日記に、灰色の空、貧困と寒さの中、ユダヤの新年になって、ゲットーの通りは着飾った人であふれている。祝日ムードなのが救いだ。今日はぼくらが貧しいなんて思えない。みたいなことが書いてありました。

とにかく新年には、ヘブライ語イディッシュ語、ラディノ語(ジュデズモ、ユダヤスペイン語)などの挨拶や、素敵な写真が飛び交っていて楽しいです。

ユダヤ暦 - Wikipedia

ユダヤ暦」と「西暦」で検索すると対応表や変換ソフトが見つかると思います。毎年時期を調べて、ユダヤの年末から年始にかけてユダヤ人のお友だちに会ったら、Happy New Year!というと喜ばれると思います。

↓おまけ。きれいになった早稲田の戸山キャンパス。(遊びに行って来ました。本文とは関係ありません)

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複雑系のこと

今更ながら、研究に関係あるかなと思って最近複雑系にはまっていました。特に先週は何を見ても複雑系に思えて…。気持ちを切り替えて迎えた今週です。

複雑系の話は自分の研究でも私生活でもあるあるでした。研究と生活は結びついているんだなと思いました。

複雑系は、ちょっと過去にはやったキーワードなのですが、今私の中で大ブームです。

複雑系にもいろいろな話があるらしいですが、とりあえず読みやすかった入門書は増田直己さんの次の2冊です。

『「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ』 (2006 講談社ブルーバックス)

『私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する』 (2007 中公新書)

שנה טובה!!!

ちなみにこの記事のタイトルは、ヘブライ語で「良いお年を」です。ヘブライ語は右から左に書きます。ビックリマークが一番右にあるのは、ヘブライ語イディッシュ語をコンピュータで使うときによく起こる事故です。本当は一番左にきます。

今年は9月30日がユダヤ暦の新年(西暦で考えると毎年違う日になります)です。なので、9月末から今にかけて、ユダヤの人たちやそのお友だちの中には、Facebookなどで「良いお年を」の投稿をしている人たちがたくさんいます。

9/25発売『アンチ』ができました。

ヘブライ語児童文学『アンチ』、岩波書店から9月25日に発売です。よろしくおねがいします。

表紙の鳥が可愛いです。泣けて、笑えて、スカッとする本です。お楽しみに!

↓Anti by Jonathan Yavin. Hebrew (Left) and Japanese (right, my translation)

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左がもともとのヘブライ語の『アンチ』、右が岩波から出る日本語版です。

アンチ - 岩波書店

新刊『アンチ』(9月25日発売予定) のお知らせ

תודה רבה.

イスラエルの児童文学『アンチ』が、おかげさまで9月3日に校了になりました。

岩波書店のサイトから注文できます。どうぞよろしくお願いします。

アンチ - 岩波書店

立ち読みできます:

https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/tachiyomi/1164169.pdf

My first translation was from Hebrew into Japanese. Anti, a literature (for children and youths) in Hebrew by Jonathan Yavin will be published on September 25.

 

ヘブライ語版の表紙(日本語版はまた新たなデザインです)

http://www.ithl.org.il/Media/Uploads/%D7%A2%D7%98%D7%99%D7%A4%D7%94_-_%D7%90%D7%A0%D7%98%D7%991%281%29.jpg

http://www.ithl.org.il/Media/Uploads/%D7%A2%D7%98%D7%99%D7%A4%D7%94_-_%D7%90%D7%A0%D7%98%D7%991(1).jpg

 

韻の翻訳についてもたくさん考えさせられた作品でした。編集者の須藤さんにはとてもお世話になりました。

 

About the author: Jonathan Yavin

Today  I finished proofreading. I am very happy now. It exists only in Hebrew original and Japanese translation. I hope it will be translated into more languages.

About the book: Anti (youth) , Am Oved, 2010 [Anti]

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新刊紹介『手話通訳者になろう』

白水社から手話通訳者の仕事について紹介する本が出ました。
とても売れているようです。関連イベントも開かれます。
イベントの情報、申込みはこちらから:
『手話通訳者になろう』刊行記念トーク 著者に聞く手話の魅力 | Peatix

結構ユーザーがいるマイノリティ言語「手話」の世界は、イディッシュ語の世界によく似ています。

手話通訳者になろう - 白水社

手話言語条例の制定が相次ぎ、手話通訳の需要が高まっています。各分野で活躍する手話通訳者にインタビューし、その魅力を探ります。
著者 木村 晴美、岡 典栄
出版年月日 2019/08/26
定価 本体1,600円+税

ろう、手話通訳者がろうと聴者の言語を翻訳する様子を垣間見ることができる内容です。また、NHK手話ニュースのキャスターのファンであれば、必読の書でもあります(私はサッカーファンではありませんが、野口先生の解説なら見たいです)。

日本語と日本手話の関係は、ドイツ語とイディッシュ語の関係にも似ており、なるほどなと思うことが多いです。
子どものころ、テレビで目にする手話は、私には全くわからない言語でした。たまに単語レベルで何を意味しているかわかるけれど、それは、外国語と同じレベルの話です。

より多くの人々に、手話が一つの言語であることを認識してほしいと思います。
この本を読むと、ろうと聴者のことばを通訳している人たちのキャリア形成やものすごい努力について垣間見ることができます。才能の他にも、タフさ、情熱、コミュニケーション能力(これらを備えていることが才能かもしれないです)が求められる仕事だと思いました。
手話の世界がどれだけ奥深くすごいものかというのは、実際使える人にならないとわからないことでしょう。手話に限らず、差別しているうちは、相手のこと(素晴らしさ)がわかってないということなんだろうなと思います。
そしてろうと聴者の世界を通訳する人たちのお仕事に、より敬意が払われ、彼らが働きやすくなり、より多くの人達が通訳者を目指せるようになることを祈っています。
私も興味があり、以前、国立障害者リハビリテーションセンター学院の手話通訳学科で教えていました。懐かしいお顔も拝見し、とても嬉しくなりました。
白水社さんありがとうございました。

9.11のこと

久しぶりに風邪がひどくて病院に行き、意識朦朧でレシートを見たら、今日は9月11日でした。この数字を見ると、9.11の後、早稲田大学の戸山キャンパスの学食(私にとって何かあると誰かに会いに行く場所でした)に行ったら、友人が呆然としていたときのことを思い出します。
私達は共通の知人を新宿歌舞伎町のビル火災で亡くしました。その直後に起こったのが9.11でした。
きっとたまたま重なったふたつの出来事だったけれど、何が起こっているのかわからなくて混乱しました。その後にものすごい喪失感が押し寄せてきて、しばらく何もできなかった気がします。
それからいろいろなことが起こって今日に至るし、これからももっといろいろなことが起きるだろうけれど、とりあえずは風邪を治して前向きに生きていこうと思います。

池内紀先生のこと

ドイツ文学者・池内紀さん死去 エッセーでも人気博す:朝日新聞デジタル

私は池内紀先生に育てられた先生方にとてもお世話になり、ご著書も好きで池内紀先生から間接的に大きな影響を受けてきました。
ただ悲しいです。

池内先生の(そして池内先生についての)エピソードは、本当にどれも楽しいし、考えさせられるし、優しいし、大好きです。

うるおぼえなのですが、池内恵先生がFacebookの投稿かエッセーで、ヨーロッパの公園で年寄りが一人でベンチに座っているエピソードを書かれていた気がします。私はその文章が好きなのですが、内容は優しくて切なかったです。

昔、池内先生がレクチャーのときに、ドイツを描いてくださり、お母さんが子どもを抱っこしているように見えるとおっしゃっていたのがとても印象に残っています。

『東京ひとり散歩』をまた読みたくなりました。
個人的にはエルメスで買い物する話と、文京区のポスターの話が好きです。
www.kinokuniya.co.jp

池内紀先生の本はすごくたくさんあるので、ぜひ。
詳細検索結果 - 紀伊國屋書店ウェブストア

どんどん時間が経っているんだな、人っていつか死んでしまうんだなと思うと、とても悲しいです。
大変かもしれないけれど、私も面白く生きたい。

エトガル・ケレット来日、9月25日新刊予定

広岡杏子さんの訳でケレットが出るそうです。

『銀河の果ての落とし穴』
エトガル・ケレット 著
広岡杏子 訳
銀河の果ての落とし穴 :エトガル・ケレット,広岡 杏子|河出書房新社

偶然、拙訳の『アンチ』と同日発売予定です。

ケレット来日イベントもあります。
きっと人気でしょうからご興味のある方はお早めに〜。

【文学部】プレミアプロジェクト ケレット&ゲフェン招聘記念文芸イベント(10/12.10/19)|大学総合|ニュース|甲南大学


ケレットについては『社会言語学』XV(2015)に書きました。

鴨志田 聡子「言語で分ける内と外―イスラエル文学作家エトガル・ケレットの場合―」
https://syakaigengo.wixsite.com/home/2015

エトガル・ケレット来日イベント

エトガル・ケレット来日イベントのお知らせです。

詳しくはこちらのリンクから:

【文学部】プレミアプロジェクト ケレット&ゲフェン招聘記念文芸イベント(10/12.10/19)|大学総合|ニュース|甲南大学

ISMOR VOICE

同志社大学一神教学際研究センター発行のニュースレターCISMOR VOICE 28号の19ページに、2018年度のカケハシプロジェクト(ユダヤ研究者派遣)について掲載されましたのでリンクをお知らせします。

http://www.cismor.jp/uploads-images/sites/2/2019/08/CISMOR-VOICE-2820190823.pdf

ユダヤ式の結婚式

研究仲間(新郎)が先日ユダヤ教の結婚式をしました。式と披露宴に招待していただきました。披露宴の途中(割と最初の方に)、出し物としてユダヤ人についてのレクチャーもあって、珍しい結婚式でした。新郎も新婦もすでにキャリアをお持ちの研究者です。お二人の研究分野は一見全然違うのですが、かなり似たところもありそうです。今後のご研究の発展も楽しみだなと思いました。
今回の結婚式と披露宴は、解説を交えて進める方式でした。お祈りもヘブライ語、英語、日本語で一回ずつ唱えるので、流れがよくわかりました。
改めて、結婚式というのは重要な儀式だなあと思いました。
それにしても新婦さんがとても素敵でした。

帰国しました

テッサロニキイスタンブルに調査で行ってきました。イスタンブルでは、島とアジア側で滞在しました。ものすごくパワフルな都市だなと思いました。

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調査対象のラディノ語(ユダヤスペイン語、ジュデズモ)についてもいろいろな発見がありました。何かの機会にまとめて発表したいです。

イスタンブルではピラフの美味しい店を見つけて、毎日通いました。プレーンのピラフ(ひよこ豆入り)150円弱です。

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夜の8時半くらいにアジア側からヨーロッパ側を撮影。海を眺めてまったりしている人たちがたくさんいました。

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成田に着いておにぎりを食べました。やっぱお米ですね。