ユダヤ人と言語 Jews and Languages

みんな何かでマイノリティ。鴨志田聡子のブログです。All of us are minorities. By Satoko Kamoshida

シリーズ「広島に行って」2 回目 高校で日韓の歴史認識のズレを知った時のこと

(前回の続き。乱文ご容赦)

幼稚園のときの私は大人になったら「テレビ屋さん」になりたいと思っていました。その後将来の夢は漫画家や作家、エッセイストとなりますが、なにかをつくりたかったのだと思います。大学時代はお金がなくてテレビが買えなかったのを機にテレビなしの日々をすごしていましたが。

話を戻すととにかくテレビっ子だったので、子どもの頃から毎年夏になると、第二次世界大戦のドキュメンタリーをたくさんみました。大学時代に夏に海外に行くようになって、はじめてそれなしの生活がはじまりました。そこでいろんな人と接点を持って、さらに第二次世界大戦を意識するようになりました。

私の祖父は2人とも戦争に行って、帰国しました。今考えてみると、身近な2人が帰国したということに気づいていませんでした。子どもの頃は、戦争に行った人は、全員亡くなってしまったとぼんやり思っていたんじゃないかと思います。祖父が帰国してたことに、大人になってから気がつきました。祖父たちは、無事だったかというとそうではなく、少なくとも本人の心は大変だったように見受けられます。

祖父たちと同居した家族も影響を受けたようです。細かいことはわかりません。でも断片的に聞く限りでも、壮絶でした。最近近所の人たちから戦争から帰ってきた男性たちが、めちゃくちゃに辛い思いをしていたのに周りから理解されずに苦しんだようだという話をちょっとききました。

数年前に私まで戦争の影響を受けていることに気がつきました。イディッシュ語の仲間の同世代のユダヤ人たちが、ホロコーストの影響を受けているのを目の当たりにしてきました。継承されない、または継承されたトラウマが彼らを襲うのを見てきました。

実は戦後日本の「一般的」サラリーマン家庭でのんきに育ったつもりだった私自身も、それなりに辛い状況に置かれてきたらしい。ということを受け入れざるを得ず、ショックでした。「一般」なんて幻想でした。

父方の祖父は父が5歳?の頃に亡くなったそうです。母方の祖父は怪我の手当てをする係だったようですが(また聞き)、戦争について全く喋りませんでした。どちらも特に身分などなさそうでした。

私は高校生時代に韓国体験学習というのに参加して、韓国の姉妹校の同世代と交流しました。当時は封筒と便箋をつかっての文通して親交を深め、お互いの国を訪問してホームステイしました。そのとき自分は日本軍がやったことをずいぶん知らないんだなということを知り傷つきました。いろいろ案内してくれたガイドさんは「やった方はすぐ忘れるけどやられた方はずっと覚えている」とおっしゃっていました。きっとそうでしょう。私は自分が相手にやったことをまずかったかなと気にして傷ついてしまうタチだけど、それでもやったことに気付かない不幸なことも多々あるのだろうと思います。やられても気がつかない場合があり、いずれにしても要注意です。

イディッシュ繋がりのアメリカ人が最近「おじいちゃんは自分が日本にしたことをずっと後悔している」と書いていました。彼はずっと前に私に「おじいちゃんは日本が好きで、戦後(も)日本によく行っていた」と話していました。その時第二次世界大戦のことは言わなかったけれど。なんとなく感じながら、でもそれ以上話しませんでした。やった方も人によっては覚えてますね。「ひどいことをした」と意識できる人は、ずっと傷つきながら。

韓国訪問時に戻ります。「自分は何も知らない」と意識すると、韓国の友だちとディスカッションすらできませんでした。ただひたすら聞いて、ひたすら申し訳ない気持ちでいっぱいになったのを覚えています。

友だちの家に泊まっている時、そのおじいちゃんが電話してくれました。おじいちゃんが流暢な日本語で、困っていること、韓国でやってみたいことはないかと聞いてくれたのを覚えています。おじいちゃんとのやりとりがあまりに自然だったのが、辛かったです。また申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

おじいちゃんとの電話は私が社会言語学に興味を持つきっかけになった出来事の一つだと思います。

縁あって始めたイディッシュ語ユダヤ人の研究ですが、ぐんぐんすいこまれていきました。それは第二次世界大戦に興味を持っていたからだと思います。

祖父が2人とも戦争に行っていたのに私は何も知らなかったし、彼らは何も語らずにこの世を去ったのでした。だからなおさら知りたくなったのかもしれません。イディッシュ語の仲間たちが家族がホロコーストについて話してくれないから研究していると言っていたのを思い出します。(また今度書きます)

(明日に続く)

シリーズ「広島に行って」1 回目 ヒロシマとホロコーストと

広島に行ってきました。(写真は後で追加予定)

ユダヤのことをもっと知ってから第二次世界大戦と日本というテーマに取り組もうと思っていました。コロナ禍でいろいろ考えを巡らせたあげく、一歩動きました。

子どもの頃行ったきりだった平和資料館を再訪しました。平和資料館は改装されたのですが、何十年も自分の目に焼き付いている展示もあって、あの時見たこと感じたことが部分的に強烈に蘇りました。それと同時にいろいろなホロコースト関連の展示を思い出しました。いろんな物や事、人が、フラッシュバックのように浮かび上がってきました。

資料館には何日も通いました。私は「集団的記憶の継承」や「語り」にとても興味があります。

資料館のなかでは広島の原爆ついて、個々人の視点から聞くことができます。被曝者が直接話してくださることもありますが、私は被爆者から聞いた話を「伝承者」が話してくださるのをお聞きしました。

他の人に語る準備のある「証言者」と呼ばれる被曝者が、「伝承者」と呼ばれる方にご自分の経験をお話しされます。証言者1人に対して複数の伝承者がつき、何度もお話をうかがって記憶を継承するようです。

私がお聞きした伝承者の方もかなり何度も通われて伝承者としての試験を突破して、レクチャーするようになったそうです。レクチャーのあとしばらくその方とお話しして、伝承者になった経緯を教えていただきました。そして私の授業や人生のアドバイスまでいただきました。

ヒロシマ・ピース・ボランティア」の方々もいらっしゃいます。資料館や平和記念公園内を案内してくださいます。かなり勉強されていて、詳細な情報をお持ちです。私は公園内をボランティアさんに案内していただきました。衝撃的でした。その後東京に帰ってから資料館にその方を紹介していただき、お電話で追加でいろいろ教えていただきました。そのことについては機会があったらぜひ書きたいです。

みなさんの強烈な情熱を感じました。ボランティアの方々が、コロナ禍で活動ができなかったこと、やっと活動ができるようになったけれども、オミクロン株でまたどうなるかわからないことを話されていました。そしてボランティアを楽しんでいらっしゃることも。

被曝について継承するおしごと(ボランティア!)について、「楽しい」という単語が出てくるのには驚きました。お話をしていて、ボランティアの方々が苦しみ、悩みながら、多くの時間と心をさいていらっしゃることがよく見えましたので。

実は私もボランティア活動に参加しています。最初のふたつは自然がテーマ、最近かかわりはじめたもうひとつは教育委員会関連の動画撮影です。

自然の方は最初は子どもの付き添いで行っていたのですが、今では自分のために行っています。自然の中で優しい人たちに囲まれて、安心するし、楽しいです。自分に良い影響があるのを感じます。「楽しい」は大きな力になるのですね。

(シリーズで3日(多分)連続で投稿予定)

2022あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします。

ここ数年、イディッシュ語でいろいろ読んだので、年末年始は何か違うことをしようと思って、日本語を読んでます。家族が寄ってきて、何を読んでいるかと聞くので、たまに音読します(音読は小学生の頃から下手でかなりの苦手意識があります。ついでに言うと語学にも苦手意識があります)。

私の母語は日本語です。けれどもそれでさえ、いざ音読してみると難しい。読み方や意味がわからない単語が出てきたりします。中学生向けの本でも本気で音読しようとすると、初見で良い感じに読むのはかなり難しいです。それがわかりちょっとホッとしました。イディッシュの音読でかなり苦労しているので(ヘブライ語はもっと)、日本語でも難しいのは慰めになりました。

年末に大量の本を送ってもらって、歓喜してました。でもそれもつかの間、本棚があいてないので困ってます。夫や近所の人に相談して、とりあえず、これまで読んだイディッシュ語の文章をスキャンすることにしました。スキャンは年末には終わるだろうと思っていました。でも読んだものが、意外と多い上、また読み出してしまったり、感動を思い出してしまったりして、なかなかすすみません。

スキャンすると、ファイル名と書類の上下は全部めちゃくちゃ(日本語や英語の書類をスキャンした時には、このスキャナーって天才と思いました。だいぶ古いのですよ)。ヘブライ文字を自動認識して、めちゃくちゃになってます。自動認識機能を切ればマシでしょうがなんかめんどくさい。自ら勝手に大変にしてるくせに、少数言語は苦労するなあなどと、マイノリティについて思いをはせていました。

夫からとりあえず休むように何度か言われました。あとちょっと、あとちょっと。作業はほんとにちょっとしか進まないのに時間だけ進みます。最後には力尽きて、リビングに行って家族から「お帰り」とか。帰るところがあってよかったです。

紅白を見ながらもう紅が勝つなと思って寝て、結果が聞こえて寝て。除夜の鐘も半分夢の中。最後は終電の車掌さんのようになった夫が年明けを知らせてくれました。

初夢は悪夢で、叫びながら目を覚ましました。良い年になることを祈るばかりです。

今から笑点の録画をみます。綾瀬はるか、大好きです❤️

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A hope

東京外国語大学でのイディッシュ語の授業の話。

アメリカから送ってもらったイディッシュ語の雑誌(イスラエルで出版)の話。

I'm teaching Yiddish for three months at Tokyo University for Foreign Studies since 2016.

Today, the students in my Yiddish class made presentations about Yiddish, Sephardic and Israeli "cuisine and music." It's getting more popular about Sephardic and Israeli cultures in my class. For example, a Russian student (taking the zoom class from Russia) introduces modern Israeli musicians in Japanese! Japanese students learn to describe Sephardic music to make a presentation in Yiddish class. A Muslim student describes Kashrut, compares it with Halal, and discusses how we can find the best way to eat together. It's great. We are learning about the world through Yiddish. I see my teaching is a bit (could be "lot") balagan, and I always feel nervous about it. But what can I do? It's so inspiring for me.

↓By the way, I've got two cartons of Yiddish books from the Yiddish Book Center. It's great to have them. I can't imagine how much voluntary work is behind them. Thank you.

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カモちゃんとお水と資料

富士宮は焼きそばで有名ですが、湧水も大変きれいです。

カモちゃん自分が鴨志田だけに気になります。

↓き、きれい富士宮市観光協会 » 湧玉池

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富士山世界遺産センターと富士宮中央図書館に資料や情報をいただきに参りました。

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絶景はもちろん、お水もきれいで、恵まれた環境です。富士山はちょっと雪かぶってます。

何度見ても圧倒的な大きさです。

富士宮市観光協会 » 湧玉池

ずっとみてしまいます(実際そういう人が結構いるようです)。

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↓とってもきれいです。体感系のミュージアムで、とても工夫されていることがわかりました。全部「登り切ると」嬉しいことがありますよ:)

【公式ホームページ】静岡県富士山世界遺産センター

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トップページ - 富士宮市立図書館

晴れていれば最高〜。素人でも結構きれいな写真が撮れた気がします。

朝晩はちょっと気温低めです。あたたかくしてお越しください〜。

 

住みたい。。。

恩師の死

恩師の1人が亡くなってしまいました。先生はカゲの指導教官でした。私にはたくさんの指導教官がいたから、最初に指導教官が亡くなったことが何年も前にあり、それはそれは辛かったです。大好きだった恩師の死は辛いものです。

先生は表に出たくないなどとおっしゃり、謝辞にお名前を掲載させてくれませんでした。先生が私を助けてくれなければ、今日の私はいなかったでしょう。

先生は亡くなる前にご自分についてメールをくださいました。亡くなるまでは仲間内でも絶対口外しちゃだめとことでした。悩んで夫と相談して、お返事しないことにしました。本当に辛かったし、全部何かの間違いなら良いと思いました。

田中克彦先生が訃報を知らせてくれました。

本当にまいったな。

ご家族のことをおもうと、胸がしめつけられます。ご冥福をお祈りしいたます。

贖罪の日2021

今年は9月15日から16日にかけて贖罪の日(ヨム・キプル、ヨム・キップール)です。多くのユダヤ人が断食します。とくにイスラエルユダヤ人は断食する人が多い気がします。仕事もしないで贖罪に徹します。でも中にはめっちゃ仕事してる人もいました。エトガル・ケレットの作品(どれか忘れました)にも出てきますが、賑やかな街も贖罪の日には静まり返ります。

さて、このブログの読者の方の中には、新年の挨拶をもらった方もいらっしゃるでしょうね。今度は贖罪の日の前に、ユダヤ人のお友だちから「ごめんね」という連絡がくるかもしれません。

ユダヤ人の方々は、贖罪の日より前に色々計画してそうです。カレンダーをみると、9月20日からも祝日続きです。普段でも金曜日から土曜日にかけても安息日で、多くの人が休みます。

オンとオフがはっきり、しっかりしているのが良さそうですね。

そんなこともあってか、新年から今日までに、10月以降の予定がバババッと入りました。嬉しいけれどもやり遂げられるか心配です。毎日イディッシュです。

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近所の公園

 

 

イディッシュ語 Duolingo 続報

イディッシュ語の勉強にアプリも活用すると面白いですよ。

Duolingoでヘブライ文字の練習が充実しました。なんとイディッシュ語だけで追加された機能のようです。ヘブライ語ではまだアレフאのマークは見られません。

私もやってみましたが、結構良さそうです。

イディッシュ語トップページのアレフאのマークをクリックすると、文字練習にいけます。活字体の書き方、読み方を学べます。

たくさんの語順の並びかえに疲れたベテランの学習者さんも、今日は疲れたから休みたーいという時も、たまに文字を練習してリフレッシュしてもいいかも知れないですね。まだベータ版で。バグを発見するのも楽しいでしょう。

 

つづり方や音などなど、まだまだ論争がありますが、是非ベータ版のうちからお試しを。

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近所の道端

ユダヤの新年

ユダヤのあいさつ年末年始編。

 

Shana Tova! 今日(9月6日)日没すぎから、#ユダヤの新年(Rosh ha-Shanah) になります。#ユダヤ暦 の新年は西暦とは違う日になります。9月6日は新年の前夜(大晦日, Rosh ha-Shanah)で8日夕方に新年祭がおわります。

ちなみに上のラテン文字書きしたヘブライ語の意味はRoshが頭とかはじめ、ha定冠詞(the)、Shanahが年。Tovaは良い。

ユダヤ人と付き合いがある人はオンラインで“Jewish Calendar 2021-2022”とかで検索するかGoogleカレンダーとかに入れておくと便利ですよ。

ユダヤ暦のカレンダーや手帳はネットで簡単に買えるのでそれを使うのも手です。その場合、日本の祝日は載ってませんが。

ちなみにいくつかバージョンがあります。

2021夏のこと、昔のこと

近所で外にいる方式で三密とストレスを避け、かなり日焼けしました。フィールドワーク焼け、バカンス焼けしているように見えますが、市民プール焼けです。

8月中旬にはほとんど仕事ができなくて、仕事したい、フィールド行きたい、書きたい(書いたんですがいまいち)、訳したいと、禁断症状が出ました。いつもだったらイスラエルかどこかで人に会っているのに。いろんな人に会った夏が頭や心の中に浮かびました。

去年は去年でオンライン授業深夜に受けまくり(アメリカとイスラエルの人が都合が良い時間は私にとって深夜になります)、かなり大変だったのでした。ただ得たものは大きかったです。

何にもしない夏、仕事ができない夏、でも禁断症状は今は大丈夫です。8月末になり夏休みが終わるのがさみしいです。

コロナの件がなければ、こんなに夫と子どもと一緒にいることもなかったなあ。

この夏はほとんど仕事できてないのですが、研究費温存のため、今年度は研究中断という手続きをして、月給的なものいただいてません。誤解を招かないように念のため書きました。

自分の収入が大幅に減るのは厳しいですが、日本学術振興会によれば、そういう制度だそうで、仕方ないですね。

大学生の時みたいにバイトできたらなあ。大学1年生の途中から(それまでは片道2時間かけてほぼ毎日通いました)一人暮らしをはじめ、最初は1日50円生活。もやしが友だちでした。とくにパソコン買ったときは厳しく、まかないつきのバイトに朝6時から行って、朝食はそこで食べ、あとはもやし、麦、パンの耳を食べるなど大変でした。でもおかげさまで痩せて超ラッキーでした。

生きていくためにはじめたバイトでしたが、いろいろ経験できたし、出会いもあったし、楽しかったです。

Twitterはじめました

みなさんお元気ですか。

あと少しでユダヤの新年ですね。近所のみどりがきれいです。

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近所の道端

今年の夏はコロナ禍他いろんな事情で、私はほとんど仕事できずに過ごしました。こんなに何もしないのは何年ぶりだろう。。。

で、夏休みに読みたかった本の大半がまだそのままなので、Twitterでは、毎日1冊また1サイトくらいについてつぶやくのを目標にしてます。止まってたらつついてください。

Twitter

Satoko Kamoshida

@satokokamoshida

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近所の道(自然が保護された地域です)

 

『リーマン・トリロジー』 8末発売

イディッシュ語ヘブライ語の翻訳。これらの言語は別の言語で書かれた文章にも出てきます。その理解、翻訳のためには、さまざまな言語や文化、宗教や慣習についての専門的知識、実践の経験が不可欠です。

 

早川書房さんから発売の『リーマン・トリロジー』。

小説『リーマン・トリロジー』刊行。リーマン・ブラザーズ創業者一族の栄枯盛衰を描く巨篇!|Hayakawa Books & Magazines(β)

この本にはイディッシュ語ヘブライ語が出てきます。それで部分的に私もお手伝いさせていただきました。

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ユダヤ人の研究をしている身としては、こうしてたくさんの方々にユダヤに興味を持ってもらえそうなのはとても嬉しいです。でもこれ以上の偏見や誤解が生まれませんようにと願っています。

Jiddischseminarium Stockholm 2021年8月15-19日

スウェーデンの団体が主催するイディッシュ語夏期講座Jiddischseminarium Stockholm 2021年8月15日から19日まで、オンラインで開かれます。私もパネリストとして参加します。みんなに会えるのが楽しみです。

ストックホルムの現地時間ですのでご注意ください。申し込みと参加費が必要です。
13.30-15.00 International panel about the state of Yiddish globally (Yiddish + summary in English)...and tips for revitalization (Yiddish + summary in English)

Hinde Burstin, Melbourne
Katerina Kuznetsova, Berlin/San Diego
Satoko Kamoshida, Tokyo
Lucas Fiszman, Buenos Aires
Reyze Turner, Paris
Anna Szyba, Warsaw/Berlin
Moderator: Miriam Trinh, Jerusalem

パネルは日本時間の8月15日の夜8時半から10時です。イディッシュ語が主になりますが、英語でも説明がつくので、お気軽にご参加ください。
Jiddischförbundets sommarseminarium

全プログラムはこちらをごらんください。
Program till årets jiddischseminarium med sista-minuten-deadline 12 augusti

多摩川
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外大の授業のこと 雑感

今学期は東京外国語大学で、Collective Memories of Jewish People in Films and Texts (映像とテキストにみるユダヤ人の集合的記憶) という授業をしました。zoomを使ってのオンライン授業です。英語で授業して学生の皆さんにも英語で発表やディスカッション、コメント書きをしてもらいました。先ほど授業を終えたところです。記念に、今自分が感じるままに書き綴ってみようと思います。

 

短い間でしたが学生のみんなが成長する姿を見ることができ幸せでした。素敵だなあと思いました。将来さらなる発展を垣間見るのが楽しみです。

 

これまで外大ではイディッシュ語と東欧系ユダヤ人の文化を主に教えていました。今学期は思い切って、自分の今の研究テーマを授業で扱ってみました。アシュケナジーユダヤ人とセファルディー系ユダヤ人の集合的記憶をテーマにしました。

 

最初ちょっと私が授業したあと、学生自身に、個人や一部の地域のユダヤ人に注目して、テキストや映像を題材に調査と発表をしてもらいました。テーマは自分で見つけたり選んだりしてもらい、グループを作ってもらいました。個人でやった人もいます。

 

学生が発表について書いたコメントには、多くの輝きや優しさが見られました。知らない人同士が多かったとみられるオンライン授業で、学生がお互いを思いやり、リスペクトしている様子がコメントの中からも感じられました。感動や発見がありました。私自身は仲間がいるような気持ちが湧いてきて非常に励まされました。

 

この授業の調査と発表は、いずれにしても一般的に日本人があまり知らないようなことを調べ、英語でスライドを作り説明する必要がありました。大学1年生もいましたし、テーマもマイナーなのではじめてのことも多くて大変だった人もいたと思います。

 

そして発表後は、成功したと感じた人も、もっとうまくやりたかったと感じた人もいたようです。でも私としてはいずれの発表も興味深かったです(今後自分が失敗したと思ったときは、このことを思い出そう)。

 

内容はもちろんですが、その人がなぜテーマを選んだか、それをどう理解し、どう他の人に伝えようとしているかを見て、個人的には多くの学びがありました。どれも意味深い発表でした。

 

多くの学生がコメントに書いていましたが、歴史で学んだ大きな事件やいわゆる一般常識も、個人的な体験を通して知ることで、理解が深まります。そして意外な側面が見えてきます。私もそう思います。

 

大学から授業は英語でやるように依頼されていました。言語を研究する者としては、いろんな葛藤がありましたが、英語でコミュニケーションすることで、なぜかオープンになれるところもあるなと思いました。別に上手くもない英語ですが、どこかで自分自身が慣れているのかもしれないです。コロナ禍で、自分が家族以外と日本語で話すことが非常に少なくなりました。イディッシュ語とラディノ語でオンラインミーティングを続けていたのも関係ありそうです

 

授業では、ユダヤ人の集合的記憶について学んで窪田由佳子著『シベリアのバイオリン』(2020、地湧社)を教材に日本人の記憶にも注目しました。シベリア抑留の想像を絶する辛い側面についてだけではなく、創造的で文化的な活動をされたことが書かれています。個人的にはユダヤ人の文化的活動とも重なるところがあるとも思いました。いつか授業で読みたいと思っていて、今回思い切って授業に結びつけて、著者の窪田さんにゲスト出演までお願いしました。

 

まず授業でこの本をみんなで順番に音読しました。まず、ユダヤ人をテーマに英語でコミュニケーションしてきた仲間と、日本人について日本語で読むのはとても新鮮でした。日本語で読むのに、それについて話すときは英語になってしまうのは面白いなと思いました。ハッとして、日本語に切り替えてみましたが、また英語に戻ったりします。

 

イディッシュ語話者の読書会のことを考えました。普段は英語やヘブライ語など他の言語を話している人たちが(イディッシュ語母語話者もいますし、普段もイディッシュ語の人もいます)、読書会中はイディッシュ語で文学を読んでディスカッションをします。

 

外大の授業に話を戻すと、最終回では『シベリアのバイオリン』の著者の窪田由佳子さんにzoomでお話をしていただきました(小学校なども含めて様々なところで講演をされているとのことです。お名前や本のタイトルで検索してみてください)。

 

コロナ禍で子どもたちの学校のイベントは軒並み中止だったり、留学の予定があったのにできない学生を見たりし、私も海外調査の予定が立てられなかったりしています。が、コロナ禍であるからこそできていることが、こうしてたくさんありますね。たまに寂しさも感じますが、充実してはいます。ということで、引き続きなるべく楽しい文化的な生活をしていこうと思ってます。

 

これから暑くなりそうですが、どうぞお身体をお大事になさってください。

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ナフタリ・ベネット氏のこと

最近イスラエルの首相になったベネット氏が出てきたので、昔(2016年)書いた記事ですが、彼のこともちょっとわかります。学校推薦図書になりかけたパレスチナ人とイスラエル人の恋愛小説。ベネット氏がしたことは?そこでイスラエル人がとった行動は?

ニュースで見えきれないイスラエルがちょっとわかります。せっかくなので紹介させてください。

鴨志田聡子「恋愛小説がイスラエル社会で騒動に」(『季刊アラブ』pp.24-25)。

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小説ではイラン系ユダヤ人がアメリカでパレスチナ人と大恋愛するが…というお話です。書き手はイラン系ユダヤ人の人気女性作家です。

タイトルの『生垣』(英題『ボーダーライフ』)が2人の仲を切り裂きます。パレスチナ問題を考えるとき、当事者たちのジレンマを一部でも垣間見ると理解が進みます。

この『季刊アラブ』の目次を見ると都知事になられる前の小池百合子氏の「エジプトに抜かれる!?日本の女性参加」(←必読)の隣です。

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『季刊アラブ』は面白い記事がいっぱいですのでぜひ他の号も見てみてください。

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今後どうなるでしょうか。

『生垣(ボーダーライフ)』は、面白い小説です。すでにいろいろな言語に訳されていて、ポーランド語に訳したのは友人でした。映画化を機に日本語に訳されると良いですね。